春、すごい山に、私たちは登ってきました。 その山の名前は、大江高山』

―どういう意味ですごいのか?

大江高山大江高山は、大田市の南西、大代町・祖式町に位置する、標高808mの山。

今から約200万年前に活動した火山から成る大江高山火山群の最高峰。
この火山群には、大田市が誇る世界遺産「石見銀山」の銀鉱山、仙ノ山(せんのやま)も含まれています。石見銀山をつくった火山活動によって生まれた、大江高山。 

そう聞くだけでも、なんだかすごい山ではないか!と思いますが...この山のすごさは、その成り立ちだけではないのです。


イズモコバイモ大江高山に登ることになったきっかけは、川本町のイズモコバイモでした。

"春の妖精"イズモコバイモの日本一の群生地、川本町の谷戸(たんど)地区へ出かけたとき。保全活動を行うボランティアの方々が、この山のことを教えてくださいました。 

(川本町のイズモコバイモについては、川本町の自由帳『春の妖精 イズモコバイモ』をご覧ください。)

谷戸地区 イズモコバイモの群生地「隣(大田市)の大江高山にもイズモコバイモが咲いているよ。4月上旬に行ってごらん。同時に春の女神に会えるから。春の女神はウスバサイシン(寒葵)の葉の裏に卵を産んで、葉を食べて育つんだよ。大江高山にはウスバサイシンがたくさん自生しているからね。たくさんいて、乱舞している姿が見られるよ。行くならこの時期しかないよ!行って見ておいで。」


―いえ、お伽話をしているのではないのです。

春の女神は、ギフチョウのこと日本の本州の西半分だけに生息するギフチョウは、アゲハチョウの祖先種といわれる絶滅危惧種。黄色と黒色のトラ模様で、羽根を広げた大きさは5.5cmほどの蝶。
4~5月にだけ現れる、"春の女神"です

4月上旬に大江高山に登ると、"春の女神"ギフチョウと、"春の妖精"イズモコバイモを同時に見ることができると聞いたら、それは登ってみないわけにはいきません!


早速、標高808mの登山です。

峻険で知られる大江高山。大代町側の登山コースは山田、飯谷と2つあり、一般コースと呼ばれるほうが「山田コース」(約2.5㎞)。そして、健脚コースと呼ばれる「飯谷コース」は、山頂へと直に進むため、道のりは約1㎞。斜面がきついが短時間で登ることができるそうです。(どちらのコースも、登山口まで1㎞程のところにバス停があります。石見交通バスで大田市駅から40分程です。)

大江高山(飯谷)

最初は意気込んで「飯谷コース」の登山口を目指しましたが、山が近づくにつれて怖気づき・・・結局、「山田コース」を登ることにしました。
大江高山(山田バス停近くの駐車場から登山口へと向かう道)山田バス停のすぐ近くの駐車場に車を停め、長閑な田園風景を見ながら登山口を目指します。
大江高山・山田登山口へ向かう道のり

道中の矢印看板に従って桜や菜の花や春の空気を感じながら歩けば、登山口に到着です。
大江高山(山田登山口)

難易度の低いコースと思い登りましたが、山田コースも急斜面は多く、木に手をかけてよじ登るところもあり...冬の間に鈍りきった身体には結構な厳しさがありました。途中で引き返して行く方の姿もありました。(これは、日頃鍛えていない私たちは飯谷コースを選択しなくて正解だったかもしれません。)一般コースとありますが、きちんとした登山の装備で臨むことをおすすめします。

 大江高山登山道(山田コース) 大江高山登山道(山田コース) 大江高山登山道(山田コース)

ただひたすら登るだけでは挫けてしまいそうでしたが、途中で出会った近くの方に自生している珍しい植物を教えていただき、初めて見る花を楽しみ、一呼吸つきながら登り進めていきました。
碇の形をした

件のウスバサイシンも見つけました。春の女神はもう近くでしょうか。

ウスバサイシン(寒葵)

しかし、中腹まで登っても姿はなく...六合目。

ここに来て初めて展望が開けます。ずっと山の中を歩いてきたので、この見晴らしを見た嬉しさ。まだまだ先は長いぞという気持ちと、結構上まで登ったんだなぁという気持ちと、噛みしめながら、息を整え、また登ります。
大江高山六合目

ですが、女神はまだ現れません。・・・焦りを感じ始めたとき

―――びゅんっ!!


え?!春の女神、我々の想像を裏切る素早さで横切って行ったではないですか!!

カメラを構えた頃にはもう・・・いない!!
大江高山7合目

見間違いだったのかなぁ?と、しばらく登っていくと、また!遠くからやってきてくれました!

ひらひらひらひら・・・びゅんっ―――!!

個人的には速いと感じたのですが、蝶には全く詳しくないため、ギフチョウが速いのか、私が今までに見てきた蝶々がゆっくり飛ぶタイプのものだったためなのか、その日の条件でギフチョウたちが速く飛んでいただけなのか。断言はできません。しかし、私たち広報スタッフ2人が見た春の女神は、すばしっこく飛びまわる、アゲハチョウを少し小さくしたような、可愛らしくも綺麗な蝶でした。

登るごとにその数は増えていきます。写真は、運よく葉に止まったところを撮影したものです。
大江高山西峰

そうして、何度かギフチョウに出会いながら、1時間半をかけて山頂へ到着!

大江高山

・・・したと思いきや!?

山田コースは、最初に779mの標高点まで登り、その後緩やかな馬の背を通って、頂上808mに到達するルート。
私たちがいるのは、779mの西峰!

登頂したと舞い上がった後、一瞬折れそうになる、心・・・。(次からはきちんとコースを確認してから登ります。はい...)

これから山田コースを登る皆さん!西峰へ一旦登って、次は馬の背。山頂はその先です!
気を引き締めて歩いていきましょう!!

大江高山(馬の背)大江高山(馬の背)馬の背から見る大江高山山頂

緩やかに下り上る馬の背。急斜面を登った脚と折れかけた心には少し堪えましたが、それでも登りきれたのは、挫けそうになる度に目の前に舞い現れる、春の女神たちの仕業でした。

突然現れるギフチョウの舞いゆく様を見届けると、また出会いたい一心で足が前へと進みます。
ギフチョウ

馬の背にはギフチョウだけでなく、足元に目を凝らすとイズモコバイモの姿もありました。
大江高山のイズモコバイモ

川本町で教えていただいたとおり、咲いていました。"春の妖精"イズモコバイモ!

その他にも、ミスミソウ(別名:雪割草)という可愛らしい花も咲いていました。
この時期に大江高山に登る人は大体、ギフチョウとイズモコバイモとミスミソウの3つを同時に見るために来ていると、馬の背で出会った方に教えていただきました。

「ミスミソウ」の拡大写真

「大江高山(馬の背)」の拡大写真

「イズモコバイモ」の拡大写真

目の前を飛ぶ春の女神に、足元には春の妖精、そして春を伝える可愛らしい雪割草。時折吹く風にも励まされ、登り始めてから約2時間半。辿り着いた頂上です。
大江高山山頂からの景色 大江高山山頂 大江高山山頂

大江高山の頂。春霞で少しぼんやりしていましたが、北東には三瓶山が見えました。
大江高山山頂から見る三瓶山山頂ではギフチョウたちが乱舞していました。女神の舞を見ながら、お弁当。普通のおにぎりが特別なものに感じられる、満足な時間でした。

大江高山登頂大江高山のことを教えてくださった川本町の方に、感謝したいと思います。また、登山途中に出会った親切な方々にも、色々なことを教えていただきました。本当にありがとうございました。

 

「大江高山、すごい山だね。」

そんな感動に花を添えてくれたのは、私たちの目の前を横切って羽ばたく、春の女神...

 

―――びゅんっっっ!!!

「大江高山登山道(山田コース)」の拡大写真

「春の女神を見た!」の拡大写真

「大江高山」の拡大写真