美しい水と森と「匹見ワサビ」

吉田くん

島根県益田市匹見町→匹見といえば⇒ワサビ。それと思って食べた記憶はないものの、イメージは自然に浮かんでくるので、近年は衰退していたこと、Iターンの方がワサビ作りを始められたことを記事で知ったときは、時の流れを想い感慨にふけったものです。その後も "荒廃したワサビ田を復旧"、"Iターンが増えている"との話題に活気を感じていた頃、島根県石見エリア公式ガイドブック「石見たび。」2014夏号に「葵屋(あおいや)」による『トレッキング・わさび田見学』というプログラムが紹介されていました。都合により今回参加は見合わせましたが、「葵屋」さんを訪ね、お話をきかせていただけることになりました。

 「葵屋」は、Iターンの方を中心に結成された「匹見町わさび生産組合青年部」のうち2名が共同で立ち上げた組織で、おふたりは島根にきてそれぞれ6年目と7年目、主にわさびの生産・加工・販売をされています。

 匹見町は益田市街地から車で50分ほどのところで、広島県とほんの少し山口県とも接しています。"面積の96%は森林で、広葉樹に囲まれた町"と紹介されています。高津川、匹見川沿いを奥深い中国山地の方へ進んで行くと、やがて町に到着。「葵屋」は匹見川支流近くにありました。

匹見川1

匹見川2

匹見川3

かつては「東の静岡、西の島根(匹見)」と称されるほど島根県はワサビの産地として名高く、中心を担っていたのが匹見町と言われています。栽培にはきれいな水と水温が高くならない場所が絶対条件です。高津川はこれまで何度も清流日本一に選ばれている川ですが、匹見のワサビはその支流・匹見川のさらに支流の最上流域、広葉樹森の湧き水に育まれています。・・深呼吸・・

匹見川4

 山からの湧き水を利用する"沢(水)ワサビ"を育てる渓流式ワサビ田は、人が沢(谷)に石をひとつひとつ敷いたり積み上げたりしてつくります。栽培・収穫は、傾斜が急で狭い山道に道具を携え分け入っての作業ですから重労働、更に、ひどい大雨になれば流されてしまうワサビ田の復旧作業は大変なことです。高齢化や度重なる水害で多くのワサビ田が荒廃していき、出荷量が激減、いつしか"幻のワサビ"となっていたのです。

 車を停めてなかに入ると、ご近所の方々が作業しておられました。手伝いにきてくださっているそうです。いろいろお世話になっているそうで、地元の人たちといい関係で、地域一丸の取り組みであることが、その光景でいきなりわかりました。

 ワサビのお話や産地として有名な静岡や長野との栽培環境の違い、匹見のワサビはその見た目よりとにかく粘りと味がいいことなどひとしきりお話を伺った後、ワサビを試食させていただけることになりました。石州瓦のお皿にのせて!石見の自然尽くしです。

 やさしいパステルグリーンでホイップのようなその見た目からは辛さを感じません。ありったけスプーンですくってほおばりたくなる衝動を抑え、その半分の半分の半分の半分ほどを口に運びます。入れた瞬間ほわっ・・・っと甘やかな感触、い~い香りがひろがる~とほほ笑んだ次の瞬間
ツン!・・・!!と刺すような辛さが鼻を抜けていきます。本物のワサビは辛いけど甘い。新鮮な生のワサビは甘みがあるのだそうです。納得。

 続いて自然薯のとろろにワサビペーストを絡めて花ワサビのおひたしものせて、 "ナンテゼイタクナンダ(ワサビ自然薯とろろ) 蕎麦"もいただきました。美味しさに感動する一方、口のなかはヒリヒリしてきましたが、清涼感溢れる"自然"を食べて体がきれいになるような気がします。思いがこもった"本物"をいただく至福の時間に、ありがたいことだなぁと、ただただ感謝の気持ちになりました。

わさび

わさび

瓦のお皿にワサビをのせて
瓦のお皿にワサビをのせて

ワサビ自然薯とろろ蕎麦
ワサビ自然薯とろろ蕎麦

降り始めた雨が小降りになったので、一番近くのワサビ田を見せていただけることになりました。車でしばらく走り、道路から歩いて向かいます。傘をさし長靴姿で歩きながら、(道具を持って、収穫したワサビを背負って行き来するのは大変だろうなぁ)と思いました。

ワサビ田へ向かう道
ワサビ田へ向かう道

ワサビ田へ向かう道2

足を止め初めて目にするワサビ田は、そぼ降る雨と木々の間から射す光の演出もあり、辺り一帯静謐で、あまりの美しさにまるで神秘の植物をみているような思いがしました。

渓流式ワサビ田
渓流式ワサビ田

 

渓流式ワサビ田2

生育には3年くらいかかるそうです。それだけ愛情もかけられるのですね。

ワサビの栽培方法には、流水を使わず、また量産が期待できる畑(陸)ワサビもありますが、豊かな森の源流域にある匹見だからこその沢(水)ワサビの復活に熱い思いで取り組んでおられ、20~30年前まで使われていたワサビ田の復旧は、ボランティアの方々の協力もあり、いまも続いているのです。販路も鋭意拡大中! 現在都会地での取引も問い合わせも増えており、量が追い付かなくなっているほどなのだそうです。匹見ワサビの良さを端的に伝えるお話ですし、Iターンの方が増えているという事実がまた、その魅力と可能性を十分に物語っているように思います。

 和食は世界無形文化遺産に登録されました。日本原産のワサビももっと注目され広まっていくかもしれません。葵屋さんも匹見ワサビを益田のシンボル、島根のシンボルにしていきたいと語っておられました。 "ワサビは島根にあり!"との名声が世界にまで轟く日がくるといいなと大きく考え、ワサビ栽培に関わるすべての人のご活躍を祈り、ワクワクしながら帰途に就きました。 "まぼろし" が "まぼろしでなくなる"日を楽しみに。

広葉樹林

匹見川4

匹見川

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