韓竈神社は山中に
2015年02月17日
出雲市平田の山中にある、韓竈神社(からかまじんじゃ)。『珍しい特色をもつ神社』としてメディアに取り上げられ、有名になったのはここ最近のこと。しかし、有名になる以前も、知る人ぞ知る神社として多くの人々が全国から訪れていたといいます。
韓竈神社の何が人を惹き付けるのでしょう?それを知るため出雲市平田を目指しました。
松江と出雲の中間にある平田の町中に入ると「鰐淵寺(がくえんじ)方面」と書かれた標識が。鰐淵寺と韓竈神社は、鰐淵コミュニティセンターの三叉路で別れるまでルートが同じなので、そのポイントまでは標識に従って進みます。(鰐淵寺は紅葉の美しさが有名なお寺です。その為、紅葉シーズンはとても込み合います。時期を選んでの参拝をおすすめします。)
さて、標識通りに行けば突き当たり。目の前に海が広がります。島根県の誇る高級海苔の産地・十六島湾(うっぷるいわん)です。ここから海を背に山の中へと入っていきます。
道を進み10分、三叉路からさらに10分。韓竈神社駐車場、到着です。
神社手前800mの後野(うしろの)バス停付近にある3カ所の駐車場には約10台駐車できます。
駐車場から神社の鳥居までは一本道。背の高い木々からの木漏れ日やさらさらと流れる小川を感じることが出来て、さわやかな気分。
癒される小道を歩いて行くと、神社の鳥居が見えてきます。
鳥居の奥は暗く、苔むした石段が確認できました。その段数およそ300段。見上げるような勾配です。また、石段一つ一つの大きさ、高さがまちまちで、しかも、天気のいい日が続いていたのに苔はしっとりとしていました。踏むたび不安にさせられます。
この石段、まるで登山のごとく厳しい参道になっています。登るのに15分はかかります。ただ、これだけが韓竈神社の特色ではないのです。普通の神社と違う、その場所はこの先に待ち受けていました・・・。
脇目も振らず登ってきたため視野が狭くなっているのか、気が付くと前方に岩が。あれ?行き止まり?と一瞬立ち止まり、視線を右前方へ。
大きな岩と岩の間に続く参道がありました。
ここに来る前に下調べをしたはずなのに、合点がいった瞬間、おお、とおもわず声が出てしまいました。
そう、韓竈神社は『岩の裂け目を通りぬけなければ参拝できない』神社として有名なのです。
裂け目をひとしきり眺めてから、足を踏み入れました。
が、狭い。
45CMの幅(1番狭い所は35CM程)を甘く見ていたのか、足元がゆるやかに凸凹としているためか、とても窮屈です。カニのように通り、すぽんと抜け出ました。
そして、抜けた先の小高い場所に、岩壁を背に建つお社が。
先ほどまでの興奮は立ち消えてしまうほど、厳かな雰囲気。
どうしてこのようなところに・・・と、思わずじっと佇み、思考を巡らせていました。
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参拝をしてここまでを振り返れば、訪れるまでの考えは変わっていました。
アクセスがいいとはいえない韓竈神社ですが、ここに来るまでに目にしたのは、のんびりとした平田の田園風景や、きらきらと輝く日本海、島根県でも有数の唐川の茶畑、心洗われる小道や小川。田舎の美しい風景の数々。
そして、韓竈神社までのちょっと危険をはらむ参道は楽しくも辛くもあり、前をむいて、ただ進む。余計なことを忘れさせてくれる他にはない参道。
大きな岩の裂け目は、岩の圧を感じ心細く、目的である神社へ飛び込むような思いで足を進めましたが、隙間を抜ければすっと気持ちは静まり、落ち着いた気持ちで参拝ができました。
今回韓竈神社へ行っていなければ、珍しい参拝方法にインパクトがあるから人が来るのだろう。と、その程度にしか思えていなかったかもしれません。
ですが、実際に行ってみて、この道程と韓竈神社のもつ神秘性に魅力を感じました。
どちらかが欠けていてはこんなにも惹き付けられることはなかったかもしれません。
そして、帰りの参道で、多くの人とすれ違いました。
老若男女。慣れた様子で登る男性や旅行者らしい女性達、和やかに挨拶をしてくれたおばあさん。
ひっそりと険しい山中にあっても人を惹き付ける神社もある。そのことに納得して神社を後にしました。
スサノオノミコトを祭神とし、出雲国風土記にも登場する歴史のある神社であるということ、大岩の裂け目が女性の産道に見立てられ、子宝に恵まれるという言い伝えがあること、様々な要素をもった韓竈神社。ぜひ一度訪れて、その魅力を感じてください。
帰り道の風景・茶畑
帰り道の風景・十六島湾
立ち寄った十六島風車公園