宣揚祭
2019年07月28日
鳥取県日南町と島根県奥出雲町の県境に位置する山“船通山(せんつうざん)”。
標高1,143mのこの山は、高天原から降臨したスサノオノミコトが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治し「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」を得た地とされている伝説の山。
山頂には「天叢雲剣出顕之地の碑」が建っており、毎年7月28日に行われる「宣揚祭」(せんようさい)では、この碑の前で須佐之男命の姿に紛して剣の舞いが勇壮に演じられます。
そんな、神話が宿る船通山。
以前から気になっていた、この「宣揚祭」を機に登ってみることにしました。
登山コースは幾つかありますが、今回は比較的歩きやすそうな「亀石コース」を選択。
ちなみに、亀石コースの「亀石」とは、スサノオノミコトがヤマタノオロチにのませた酒をかもした石甕(いしがめ)があった所を「亀 ( 甕 ) 石谷」と呼んだところからきているようです。
そんな亀石コース。
まずは登山口駐車場に車を停めます。
駐車場は思った以上に広く、20台くらいは駐車出来そう。トイレもあります。
亀石コース登山道入口
「宣揚祭」会場は船通山の頂上。ここから約2,000mの道を約1時間半かけて登ります。
登山初心者な二人。
無事登頂できるか不安を感じながらのスタートです。
亀石コースは「赤川」という渓流に沿った道を進みます。
この「赤川」はスサノオノミコトがヤマタノオロチを退治した際、川がオロチの血で真っ赤に染まったことから「赤川」と呼ばれるようになったとか・・・。
船通山は、神話にまつわる伝説などが地名にも現れていて、事前に調べて登るとさらに楽しめそうです。
最初は植林の中の道。
少し行くと、自然林へ。
道幅も狭く、傾斜もきつくなってきます。
360度緑に囲まれた世界。季節は夏。植物の生命力を感じます。
真夏日の暑さの中、登り始めて早々にバテ気味でしたが、すぐ横を流れる渓流のせせらぎや木漏れ日は心地良く、全身で自然を満喫しながら進みます。
ごつごつした岩の道。
途中何度が渓流をまたぎます。
きつい登りの途中には、ベンチも。
しかし10:30に始まる宣陽祭式典。ここでゆっくり休んでいるわけにはいきません。今日までの鈍りきった身体に鞭打って、なんとか歩を進めます。
急な登りを登りきると、比較的平らな道の続く横手道になります。限界に近かった身体もこの横手道でしばしの休息。ブナ林の中、ここまではゆっくり味わえなかった周囲の景色を楽しみながら、あらためて自然の空気を身体いっぱい吸い込みます。
続いて横手道から愛宕道へ。 さあ、ここからがジグザクに登って行く最後の試練の道です。
ようやく愛宕道が終わり、なんとも嬉しいかん木の平らな道へ。亀石コ―スとも合流し、いよいよあと少し。
かん木が切れると、50m ほどの急な登りに。
あ~ついに頂上が見えてきました。
太鼓の音が聞こえる中、歯を食いしばってなんとか到着です!!
頂上にはすでに沢山の人が・・・
待ち構えていたスタッフの方に宣揚祭のパンフレットをいただきました。
登頂した感動に浸りながら、落ち着いて辺りを見回してみると、まさに360°の大パノラマ!!
晴れていれば、大山や三瓶山も見えるとか。
この日は曇り空で、深い霧のようなものがありましたが、山頂に吹く風は気持ちがよく、神事が始まるまでのわずかな時間、疲れた身体を休ませます。
船通山は4月下旬から5月上旬にかけてはカタクリの群生が見られることでも有名な山。
(以前の現地レポート「春の船通山」にて紹介しています。)
季節によってまた違った顔も見せてくれそうです。
そうこうしているうちに、いよいよ式典がはじまりました。
神職の方が数人でお供えものをし、祝詞を上げます。
その後、「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)出顕の地」の碑の前でスサノオの命に扮した神職の方が、剣の舞を奉納し、船通山登山の安全を祈願します。
大空の下、勇壮に舞うスサノオの姿に見入っているうちに時が経つのを忘れます。
最後は皆が万歳三唱で神事は終了。
初めての登山は少々きつかったですが、自然が本当に美しかった。
そして、登頂した時の気持ちよさと神事の神秘的な体験は忘れることができません。
またいつかカタクリの花が一面に咲く春の船通山にも挑戦してみたいですね。