春の船通山
2016年05月31日
春の船通山登山。
山頂一面に咲くカタクリの花を見ようと、多くの方がこの山に登ります。
「毎年この時期に登っているのよ。」という地元のご夫婦もいらっしゃいました。
船通山(せんつうざん)は、島根県奥出雲町と鳥取県日南町との県境に位置する山で、標高は1,142m。比婆道後帝釈国定公園の一部に指定されています。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説で有名な須佐之男命(スサノオノミコト)が、高天原を追放された後に降臨した地とされている山です。
島根県側の登山道はふたつ。
渓流沿いのやや険しい道を登る「鳥上滝コース」と、ブナ林の横手を通る緩やかな「亀石コース」があります。(島根県自然環境課の登山道マップ をご参照ください。)
今回は、鳥上滝コースに挑戦しました。
約2.2kmのコースで、登山初心者、運動不足、充分なのはやる気だけ!の女性2名で登って、山頂まで1時間15分ほどかかりました。
鳥上滝登山口の駐車場に車を停めて、登山開始です。
登山口から林道をしばらく進むと、石畳の道が現れます。
林道がずっと続くと思っていたため少し驚きましたが、苔生す岩が新緑と相俟って、美しい道でした。
途中、沢を何度か跨ぎながら登ります。
ゴツゴツした石を渡り歩くと、幼い頃の冒険心が呼び起こされたようで、気持ちもワクワクと足を進めることができました。
鳥上滝です。
高さは約16m。登山口から30分ほどのところにあります。
この滝は斐伊川の源流。かつては八岐大蛇が棲みかにした場所ともいわれています。
八岐大蛇の棲みかと言えば"天が淵"が有名ですが、氾濫を繰り返した斐伊川の源流と考えると、ここを棲みかとする説も頷けます。
鉄の階段(鳥上滝 横)
木段の道
鳥上滝から頂上までは1,250m。看板には45分とありました。
滝のすぐ横の鉄階段を登り10分も進むと、道は渓流から離れ、後はジグザグに傾斜を上げて続く木段の登り道です。
ここが一番の頑張りどころ。長く続く道に、だんだんと口数も減ってゆきます。
途中、下山して来られる方々に励まされながら登り進め...
あと少し!というところに顔を出してくれたのは、カタクリの花です。
"もう少しだよ。よく頑張ったね。"とささやき出迎えてくれるような、控えめで可愛らしいカタクリの花。その姿に元気付けられ、もうひと踏ん張りです。
カタクリの花(ユリ科)
山頂近くの遊歩道。ここで亀石コースと合流します。登り疲れた足には、最高の道です。
そして、この栄光のカタクリロード(?)を進み、また少し登ると、遂に山頂です。
見事に広がるカタクリの花。なんて可愛いらしいのでしょう。今までの疲れが一気に吹き飛ばされました。
山頂には、"天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)出顕之地"の記念碑が建てられています。
船通山の麓に降り立った須佐之男命は、八岐大蛇を退治し、八岐大蛇の尾から得た天叢雲剣を天照大神(アマテラスオオミカミ)に献上したといわれています。
天叢雲剣は、後に三種の神器となる草薙剣(くさなぎのつるぎ)です。
生憎、この日は黄砂の影響で見晴が良くありませんでしたが、すっきりと晴れていれば、360度の大パノラマ!三瓶山や大山、宍道湖だけでなく、遠く隠岐の島まで見ることができるそうです。
船通山山頂のカタクリの花
シーズンということもあり、山頂には20名程の方がおられ、カタクリの写真を撮ったり、座ってお弁当を広げたりと、銘々に楽しんでおられました。私たちもカタクリの花を見ながら、登山前に調達した奥出雲の名産、仁多米のおにぎりでお昼ごはん。これはおすすめの組み合わせです。
鈍った身体には少しきつい道のりでしたが、山頂の景色を味わうと、毎年この山に登られる方の気持ちが良く分かります。なんとも言い表せない、至福のひとときを過ごすことができました。
ベンチやトイレが設置された山小屋もあり、山頂でも安心して寛ぐことができますよ。
鳥上滝コース
山頂のカタクリの花
船通山の山頂
下山時は、登りの苦しさが嘘のようにすいすいと下っていくことができましたが、日差しで斜面の土が乾燥して滑りやすくなっている場所がありました。油断は禁物です。
登山初心者の私たちは、動きやすい服装にスニーカーという格好で挑みましたが、やはり登山用のシューズ等を用意されることをおすすめします。ゴツゴツした岩や、ぬかるんでいる斜面もあり、決して歩きやすい道ばかりではありません。
殆どの方がトレッキングシューズにトレッキングポール(登山用のストック)を持って登っておられました。
また、今回は、登り下りともに鳥上滝コースを通りましたが、各登山口から徒歩30分ほど下にある"わくわくプール"を起点にされると、登り下りでそれぞれのルートを進むこともできます。私たちも、もう少し身体を鍛えて、次回は両方のルートを歩いてみたいと思います。
新緑の鳥上滝コース
サンインシロカネソウ
カタクリの見頃は、例年4月中旬から5月上旬頃です。
毎年7月28日には、天叢雲剣の出顕を記念した「宣揚祭」が行われ、山頂で神楽の舞が奉納されます。