そうだったのか 和紙の魅力を再発見!
2017年08月29日
「石見(いわみ)」、または「石州(せきしゅう)」とは昔の行政区分で、現在の島根県西部を指します。このサイトで地図など19市町村を3色に色分けしていますが、そのなかの黄色に当たる9市町村です。
「石見」と言うと、まず浮かぶのは石見神楽!
子どもからおとなまで、この地では生活の一部と言えるほど暮らしに根ざしている伝統芸能ではないでしょうか。あちらこちらで定期公演もされています。
では「石州」と言えば、その続きにどんな言葉が浮かびますか?
浮かんだ方も "空"をみている方にもこれからは
『石州和紙』が浮かんでほしい いつまでも
石見神楽の衣装には石州和紙がたくさん使われていて、神楽の花形ともいえるオロチのからだ・蛇胴は、竹と石州和紙のみで作られているそうです。
『石州和紙』とはどんな紙なんだろう。そもそも和紙についてよく知らない・・
日本に紙の作り方が伝わったとされるのは、『日本書紀』によると推古18(610)年。
聖徳太子が活躍していたとされる時代です。
それでは石見地方に伝わったのはいつかというと、
江戸時代に書かれた紙漉きの教科書『紙漉重宝記』によれば、和銅2(709)年、柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)が、地方を治める国司としてこの地に赴任して、石見の人々に教えたのが始まりなのだそうです。
以来、手漉きによる和紙作りは連綿と受け継がれ・・・
石州和紙
およそ1300年後の平成21(2009)年、『石州半紙(ばんし)』はユネスコ無形文化遺産に!
世界にその価値が認められました。
平成26(2014)年には、本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)とともに、「和紙 日本の手漉和紙技術」としてあらためて登録されることになりました。
石州半紙が早くから世界に認められたのは、昭和44(1969)年に、いち早く国の重要無形文化財の指定を受けたことが大きかったそうです。
なんだかすごい石州半紙のことを知りたい!
それなら、
浜田市、三隅中央公園内の『石州和紙会館』へ行ってみましょう!
平成20年10月にオープンしたこの施設は、石州和紙(半紙)の詳しい紹介はもちろんのこと、後継者を育てるための研修、ブータンをはじめとする国際交流などの情報発信、オリジナル和紙の製造・展示、商品開発・販売の拠点。つまりここへ来れば石州和紙のほぼ全貌がわかると言えるのではないでしょうか!?
"石州和紙"は石見地方で漉かれている和紙のことですが、よく見ると、国の重要無形文化財やユネスコ無形文化遺産に指定されたのは"石州半紙"です。この違いは?
それは原料。
和紙作りに必要なのは木の皮の繊維と水、それに補助材料として"ネリ"となるもの・・石州和紙はトロロアオイの根の粘液。
和紙作りの原料
トロロアオイの根
和紙は、原料となる木の皮に含まれる繊維の絡まりで成り立っているのです。
木の皮には繊維があるから全部紙になるということになりますが、長い歴史のなかで、効率よく、丈夫で上質な紙作りに適していると絞られた代表的な植物が、
楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)、この3つでした。
これらの植物で作る紙の総称が"石州和紙"。
なかでも繊維が長く、簡単には破れないとてもとても丈夫な紙になるのが楮(こうぞ)。
その楮で作る紙のみを"石州半紙"というのです。(サイズなど規格も定められています。)
楮(こうぞ)
楮(こうぞ)
石州半紙は、より強く丈夫にするための製法で作られており、そのため少し色がついてしまうのですが、「紙は石州」と言われるほど日本一丈夫で強い紙となり、文化財修復の下張りや裏打ちなどにも使われています。水にも強いため、江戸時代には大阪商人が帳簿に使い、火災のときには井戸に投げ込んで守ったそうです。
その丈夫さは現代でも証明されており、昭和58(1983)年の豪雨災害で泥水に浸かりながらも水洗いして見事な状態に戻った貴重な"お宝"が展示されています。ここへ来てぜひじかに見てみてください(ヒントは昭和48年にV9!)。
かつては農業のかたわら冬場の仕事として兼業で紙漉きをする人もいて、明治22(1889)年には、石州半紙の製造者は石見地方で6,377戸もあったのですが、国の重要無形文化財の指定を受けた昭和44(1969)年には10戸、平成18(2006)年には4戸ほどになりました。
現在、4軒はすべて専業でやっておられます。
展示を見てもわかりますが、同じものを作るのではなく、建材、染紙、糸に加工するなど、紙の活かし方にそれぞれ特徴があるんですよ。
館内展示の様子
ここへ来たらなんといってもスタッフの方のお話をきくのがオススメです。 ここでご紹介した内容も含めふんふんと耳を傾けながら、和紙はそんなにも丈夫なのか、"活躍の場"は無限なのか、和紙って、和紙って・・と終始目を丸くしてばかりの自分。和紙は繊細で、紙は簡単に破れるものとしかイメージになかった・・浅い 浅いよ。 興味だけで何の知識を持たずに行ってもとてもわかりやすく、和紙のこと、頼もしさ、魅力がよくわかりました。
この地は水がきれいで軟水という、手漉き和紙に必要な条件を満たし、更に風当りの少ない盆地で栽培する楮は良質で、グングン育つのだそうです。
紙漉きに適した風土をもち、いい紙が出来るまちには、美しい自然と、その恵みを生かし熟練した技術による手作業でものを作る人、それを守り支える人がいる。見学を終えてとても豊かな気持ちになりました。
石州和紙のランプシェード
ここでは石州和紙を購入することができますし、紙漉き体験もできます。会館はもちろん、いろいろな場所で企画・展示もされていて、石州和紙に親しむ機会を提供してくださっています。
全国で唯一の海の見える紙漉きの里、石州和紙会館!