日本一の大きさを誇るとされる出雲大社神楽殿の大しめなわ、島根県の人なら一度は見たことあるのではないでしょうか?出雲大社のシンボルのような存在ですよね。その大しめなわ、一体どこで作っているのかご存じでしょうか?

今回まちなびスタッフは、その大しめなわが作られる現場に行って来ました。
そうなんです!今、まさにあの出雲大社神楽殿の大しめなわが制作されているのです!


向ったのは飯南町。道の駅頓原のすぐ隣にある『大しめなわ創作館』です。

出雲大社のような外観の大しめなわ創作館
出雲大社のような外観の大しめなわ創作館

平成26年にオープンした『大しめなわ創作館』は、しめなわに関する資料展示と全国のしめなわを制作する、全国的にも珍しい施設です。実際にしめなわ作りを体験することもできるんですよ。

その大しめなわ創作館では、平成30年7月17日に行われる大しめなわの架け替え・奉納にむけての作業が佳境を迎えていました。前回の架け替えからは6年ぶり。私達まちなびスタッフがお邪魔したのが7月3日ですから、架け替えまであと2週間です。

中は一体どんな様子なのかとわくわくしながら建物に入っていくと...

 大しめなわ創作館

藁の香りと共に、広い館内に横たわる、2本の巨大な物体が目に飛び込んできました。それは長さ16m、直径1.2mの大縄。重さは一本1.7tにもなるとか。なんとなく想像してはいましたが、実際に目にすると、その大きさに驚かされます。

まるで大きな大蛇が横たわっているみたい・・・

この大縄2本を撚り合わせ、1本のしめなわにすることなど本当に出来るだろうかと思ってしまいますが、7月15日の大撚りあわせでは、片方の大縄をクレーン2台で持ち上げ、片方を人の力で転がして撚り合わせる作業を繰り返し、総勢80名でおよそ5時間に及ぶ作業で撚りあわせるそうです。

神聖な気持ちで触らせていただきました。
神聖な気持ちで触らせていただきました。

 触ってみると、想像以上にふかふかです。
触ってみると、想像以上にふかふかです。

次に目を引くのが、大きな円錐形のもの。

大人の男性と比べるとその大きさがわかります。
大人の男性と比べるとその大きさがわかります。

これは"しめのこ"といい、大しめなわに取り付ける飾りで、五穀豊穣を意味しているとか。
高さ1.8メートル、直径1.8メートル、重さ400kg。これを3つ作ります。

計12本作ります。
計12本作ります。

これは飾り縄。しめなわを吊り木に結ぶロープを、隠す役割を持っています。

そして吊り木がこちら。

樹高20m以上のまっすぐに伸びた檜が選ばれます。
樹高20m以上のまっすぐに伸びた檜が選ばれます。

4.5トンの重さに耐える必要があるため、木質に粘りがあり強度に優れた檜が選ばれます。今回選ばれたのは、樹齢150年の見事な飯南町産の檜です。

 

大しめなわのスケールの大きさを物語るこれらのものに終始圧倒されながら、気になるのがこの制作に携わっていらっしゃる人達。
中心となるのは飯南町注連縄企業組合の方々です。

この日は5~6人の方が作業されてました。
その作業はまさに職人技です。

しめのこを制作中の石橋棟梁。

しめのこ
しめのこ

きれいに繋ぎあわされた藁。・・・どうやってつくるのでしょう?

マイナスドライバーを自身で改造した道具も見せてくださいました。

独特の形に曲げられています。
独特の形に曲げられています。

棟梁の道具達
棟梁の道具達

こちらではしめのこの仕上げに被せる"こも"を制作中。

 最後の一枚を製作中。
最後の一枚を製作中。

まっすぐに伸びた長くて美しい藁
まっすぐに伸びた長くて美しい藁

大縄の表面も本当に美しい・・・

大きさ、形、強度といったものだけではなく、大しめなわの気品、美しさは、作り手の経験と技術によって生まれるのだなぁと、一つ一つの工程を見ながら感じました。


この大しめなわ作りはいつ頃から始まるのでしょうか。
制作の過程が館内のパネルで説明してあります。

大しめなわ製作の過程が分かり易く紹介してあります。
大しめなわ製作の過程が分かり易く紹介してあります。

・・・前年の田植えから、大撚りあわせまで1年以上の歳月をかけ、1.5ヘクタールの稲藁を使用し、延べ1,000人の方の手によって、長さ13.5m、重さ4.5tの日本最大級の大しめなわが作られているんですね。

それにしても、作業されてる方は期限の迫る中、気の抜けない状況だと思うのですが、私達が近づくと、「こんにちは」「どこから来たの?」と気さくに声をかけてくださり、質問にも手を止めて答えてくださいます。皆さん、本当にやさしく迎え入れて下さるのです。ちょうど私達が見学中、地元の中学生達が見学に来た時も、石橋棟梁は作業を中断し、すぐに近くに行って説明されていました。

 大しめなわの制作を公開するのは今回が初めてだそうです。このように制作現場を間近で見ることができるのは全国でもここだけですし、飯南町に伝わる貴重な伝統と文化、またそこに携わる方々の、高い技術や人柄にまで触れることができる『大しめなわ創作館』は素敵な場所だなと思いました。

 7月17日の奉納後、出雲大社神楽殿に取りつけられた大しめなわを見に行くのが楽しみです。きっと今までとは違った思いで大しめなわを見上げることでしょう。そこには多くの時間と、沢山の方々の手間、想いが込められているのです。

飯南町のいろいろな場所に看板が・・・
飯南町のいろいろな場所に看板が・・・

詳しくは⇒大しめなわ創作館公式ホームページへ

飯南町公式観光ガイド『さとやまにあ』はこちら