日本初之宮の奥深く
2017年02月17日
"八雲立つ 出雲八重垣 つまごみに 八重垣つくる 其の八重垣を"
日本初の和歌。
この歌が詠まれたと伝わるのが、雲南市大東町須賀にある日本初之宮『須我神社』。
日本初之宮
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した須佐之男命(スサノオノミコト)は、妻となった奇稲田比売命(クシナダヒメノミコト)とともに各地をめぐり、須賀の地を新居に選ばれました。
新しく造られた宮殿を囲むようにして美しく立ち上る雲を見て、この歌を詠んだと言われています。
日本で一番最初に生まれた和歌。
日本で一番最初に造られた御宮。
この神話を発祥とするものはそれだけではなく、歌に詠まれた"出雲"が、出雲國の起源と言われています。そんな始まりの地、須我神社にお詣りに行って参りました。
県道松江木次線(24号線)沿いに見える、大きな鳥居。
高さ9m、幅6.4m。石造りとしては山陰最大級と言われる、須我神社の大鳥居です。
ここから少し細い路地を車で進むと、社殿が現れました。
須我神社
二の鳥居のすぐ先には、「日本初之宮」の石碑。
隋神門の先に見えるのは、拝殿と、日本初の和歌の碑。
社殿はそれほど大きくありませんが、2本の大きな杉の木を両脇に建つ姿は、雰囲気があります。
図ったかように対になり立つ杉の木は、2本ともに際立つ高さで、まるで天に向かって真っすぐに伸びてゆくかのよう。
須我神社の本殿
見事に両脇に控えるように立つ2つの木。これは"神業"なのでは?!と感じる立派さでした。
しかし、須賀の地の神業は・・・これだけではありませんでした!
須我神社の『奥宮(おくのみや)』
縁結びや良縁成就、子授・安産にご利益があるとされる須我神社には、本殿の背後にそびえる山の中腹にある奥宮へも一緒に参拝する、二宮詣りという信仰があります。
そこには、夫婦岩と呼ばれる岩が鎮座しているとのこと。私たちも社殿横の授与所で祈念札を受け、二宮詣りへ行ってきました。
二宮詣りの祈念札
※祈念札は奥宮では受けられません。二宮詣りをされる方は社殿のほうへ先にご参拝ください。
奥宮を抱く山の名前は、八雲山。
登山口までは、社殿から約2km。車でも行くことができます。
登山口近くの駐車場に車を置いて、登る道のりは約400m。本格的な登山の装備までは必要ありませんが、動きやすい服装、山道に耐えられる靴を用意された方が安心です。
祈念札を手に、いざ!登ります!!
登山口の石碑に「八雲山文学碑の径」と記されているように、登山道には数多くの歌碑が並べられていました。ここは和歌発祥の地。一歩一歩、歌を眺めながら進みます。
八雲山登山口
八雲山登山道
少し登ると、『禊場』がありました。神域を示す縄が張られ、湧水が勢い良く流れ出ています。
〝不老長寿
神泉坂根水
この水で身を清め 霊気を頂いて御参拝下さい。"
すっ...すごい。手水が八雲山の湧水だなんて...!!
有難く、霊気を頂く気持ちで清めて、また登ります。
しばらくすると、鳥居が見えてきました。鳥居を潜ると、奥宮までは真っすぐ、木階段を登っていきます。
直線のためか、最後の階段は勾配がきつく感じました。そこに自分の運動不足が追い打ちをかけるように...足取りがだんだん重くなります。
なんとか気合で登って行くと...目線の先に大きな岩が見えました!
夫婦岩・・・奥宮です。
ちょうど前に立ったとき、岩に陽の光が差し込んできました。神秘的な光景でした。
大きな三体の岩座。
―夫婦岩なのに岩が3つ?
大きな岩座が、須佐之男命(スサノオノミコト)
中ほどの岩座が、奇稲田比売命(クシナダヒメノミコト)
小さな岩座が、清之湯山主三名狭漏彦八島野命(スガノユヤマヌシミナサロヒコヤシマノミコト)
ヤシマノミコトはスサノオノミコトとクシナダヒメの御子神様。須我神社の3人の御祭神が、それぞれの岩に鎮座されているのです。
仲良く並んだ御姿は、夫婦・親子、家族の姿。この地で家庭を築き、御子を授かりお暮しになった神様の御姿を見るような気がします。
山中の奥宮。
澄んだ空気と静けさの中に感じる、言い知れぬ力に圧倒されつつも...どこか心地良くて、しばらく留まっていたくなるような、不思議な気持ちになっていました。
須賀の地名は、スサノオノミコトがこの地に至ったとき「我が御心清々し」と言われたことに由来しているそうです。
本当に、"清々しい"という表現がしっくりくるところ。心を落ち着かせて、二宮詣りをさせていただきました。
光を受ける夫婦岩
二宮詣り祈念札の納札箱
心地の良い空気が漂う奥宮
今回は時間の都合で断念しましたが、奥宮からさらに登ると、八雲山の山頂まで行くことができるそうです。山頂からは宍道湖や大山まで眺めることができるとのこと。きっと再び二宮詣りに訪れて、山頂まで上がってみたいと思います。
最後に、話を社殿のほうに戻しますが...二の鳥居の前にある池。ここにも神業がありました。
この池は太古の昔は温泉が湧いていたそうで、スサノオノミコトとイナタヒメが入浴されたと伝わっています。
いずれお湯は湧かなくなり今は池に変わってしまいましたが、池の中から松の木が生えていました。この松は『縁結びの夫婦松』と呼ばれていて、男松と女松がひとつの株から生える珍しい松なのだそうです。
ここは、神話の舞台。
清々しい気配の中に、スサノオノミコトとクシナダヒメ夫婦の物語が確かに残る、奥深いところです。