
「幻の広浜鉄道」今福線の旅(2)【コンクリートアーチ橋編】
2016年10月16日
同特集(1)【始まりと橋脚群編】に続いては、コンクリートアーチ橋。
今福線のコンクリートアーチ橋群は、山間の景観に溶け込みながら悲運な歴史を伝える遺産として、平成20年に日本土木学会の「選奨土木遺産」に認定されています。
この5連アーチ橋は、今は県道の一部として使われています。
路線の幅は狭いため、道路の半分が路線。半分は山側の斜面を切り崩して造られています。下から見ると、アーチ橋の奥に擁壁が重なった珍しい構造であることが分かります。
今回の旅の面白いところは、鉄道が敷かれるはずだった道を一部走りながら巡るところにもあります。ちょっとだけ機関車になった気分になって、またまた感動。
途中、石本さんが草取りをされる場面を何度か目にしました。
4連アーチ橋の上の草取りをされる『今福線ガイドの会』の石本さん。
幻となり森の中に埋もれようとしていた今福線は、地元の方々の力によって掘り起こされ、今目の前にあります。
訪れる人に綺麗な景色を見てもらいたいという想いで、自発的に草木を刈られ、場所によっては歩道の整備までもを行っておられます。
地域の方に愛され支えられているという点がまた、今福線の魅力なのだなぁ、と、感じ入る一コマです。
この4連アーチ橋には、選奨土木遺産のプレートが設置されていました。
ここは工事の中止から手が加わっていない、当時のままの状態を留めた場所なのだそうです。
このアーチ橋を歩いて、今福第四トンネルを潜ります。
今福線の他のトンネルは立入禁止となっていますので、この今福第四トンネルは唯一歩いて通ることができる貴重な場所。
初めて歩くトンネルの中にワクワクしつつ、そこを抜けると・・・
綺麗な渓流の景色がありました。ここを機関車が通っていたら、車窓からはこんなにも素晴らしい景色を見ることができたのですね。
上には浜田自動車道が見えました。
「あぁ、うらやましいぞ!浜田道!しっかりやってくれよ!浜田道!!」と、ここまでくるともう、今福線の気持ちで見上げてしまいます。
コンクリートアーチ橋の中でも、『おろち泣き橋』と名が付くこの4連アーチ橋には、不思議な秘密がありました。
アーチ橋の下に降りて、石本さんが示した地点に立ったとき、真下に流れる川の水が急に、まるで橋の上から水が注いでくるかのような大きな音に変わりました。
この音はオロチの泣き声。石見神楽のオロチ(アーチ橋)が、今福線が完成しなかったことを嘆き悲しみ泣いているんだと考え、名付けられた橋です。
肩幅ほどの差で変わる音の不思議に、何度も同じ場所を行ったりきたり...あぁ、楽しい。