素鵞社と須佐神社
2017年01月16日
出雲大社御本殿の真後ろに建つ神社、『素鵞社(そがのやしろ)』にお詣りされたことはありますか?
素鵞社は、出雲大社の主祭神である大国主大神の祖先であり、妻スセリヒメの父、スサノオノミコト(素戔嗚尊/須佐之男命)をお祀りする摂社。
スサノオノミコトといえば、ヤマタノオロチ退治で知られ、出雲神話の中でも高い人気を誇る神様。八雲山の岩盤を背後に建つそのお社には大きな力が宿っていると聞き、出雲大社へ行って参りました。
出雲大社へ拝礼し、御本殿を回って真後ろへ。素鵞社は、出雲大社を見守るようにありました。
スサノオノミコトは、伊弉諾尊(イザナギノミコト)から生まれた三貴神の中のひとり。その余りある力で、姉である天照大神(アマテラスオオミカミ)が治める高天原で乱暴を尽くし、天照大神を一時天の岩谷に引き籠らせてしまったほどの乱暴者と描かれることもありますが・・・
終に高天原を追放され人間界に降り立たれてからは、人々を苦しめてきたヤマタノオロチを退治。そのとき救った美しいクシナダヒメと結ばれ、出雲の国を次々と開拓された英雄として、多くの人に語り継がれています。
スサノオノミコトが人を惹きつけるのは、その勇ましさだけではなく、乱暴者から英雄へと成長されていった御姿が、神様でありながらも親しみや憧れを抱かせるところにあるのかもしれません。
静かでひっそりとしているのですが、近づいてみると、力強い雰囲気のある場所です。
そして、振り返ると、出雲大社。
出雲大社は、父神様であるスサノオノミコトを背後に建っているのです。
素鵞社から見る出雲大社。大変頼もしく、立派な御姿です。是非、振り返って見てみてください。
須佐神社
スサノオノミコトを祀る神社と言えば、やはり『須佐神社』を避けて語ることはできません。
出雲大社から車で約40分。出雲市佐田町須佐。山に囲まれた自然豊かな町。
出雲の国を開拓したスサノオノミコトは、最後に開いたこの地に自らの名前を授け、その御魂を鎮めたといわれています。
“ここは小さい国だが、良いところである。自分の名前は石や木には付けるのではなく、この土地に付けよう。”と、自らを鎮めるこの地に「須佐」という名を付けられたのだそうです。
スサノオノミコトを祀る神社は全国に数多くありますが、須佐神社は、その御魂をお祀りする唯一の神社です。
神戸川の支流、須佐川沿いの長閑な土地に建つ神社。装飾が少なく素朴な感じにも見えますが、なぜだかとっても格好良い。
どことなく雄々しさが感じられ...スサノオノミコトの気配でしょうか?素鵞社を訪れたときの感覚に似て、静寂の中にも強い力が漂っているように思えました。
須佐神社の中でもうひとつ注目の場所は、またまた神社の裏手!
『大杉さん』と呼ばれる樹齢約1300年の杉の木には、大きな力が秘められているとのこと。
立派な杉の御神木は、高さ約21m、幹回りは約6m。まるで御社に並ぶかのように、力強く地に根を張り、高く真っすぐに立っていました。
境内にこんな案内板を見つけました。
『須佐の七不思議』
スサノオノミコトの眠るこの須佐の地には、神秘的な七つの伝説があるのだそうです。
残念ながら、すべてを見て回ることはできませんでしたが、境内には三つの不思議がありました。
塩の井(須佐の七不思議)
神馬(須佐の七不思議)
相生の松(須佐の七不思議)
中でも一番惹きつけられた不思議伝説は、『塩の井』。看板にはこう書かれていました。
“境内に湧出している塩の井は大社の稲佐の浜に続いているので、微かに塩味を感じる。湧水に間渇があるのは潮の干満のためである。須佐之男命自ら潮を汲みこの地を清められたという。(社記)”
塩の井(須佐神社境内)
この井戸が、稲佐の浜と繋がっている...
いくつもの伝説が残る静かな山間の土地...そして、出雲大社へと繋がる不思議。いやはや、何というべきでしょうか...本当に、面白い。
そして、繋がりはここにも!
須佐神社を出るとすぐ目の前に、もう一つ神社があります。
スサノオノミコトの姉神様、天照大神を祀る『天照社』です。
弟を見守るように、密やかに鎮座されていました。小さな神社ですが、不思議と温かい気持ちになる場所でした。
"ここは小さい国だが、良いところである。"
☆素鵞社(出雲大社)について⇒出雲観光ガイド『出雲大社(特集記事)』
☆須佐神社について⇒出雲観光ガイド『須佐神社(特集記事)』
スサノオノミコトが降り立ったとされる船通山(奥出雲町)については、春に挑んだ登山の様子を『春の船通山』にて紹介しています。山頂で見た景色やいかに?!
そしてそして!スサノオノミコトは、最初に和歌を詠んだ神様としても有名ですよね。
"八雲立つ 出雲八重垣 つまごみに 八重垣つくる 其の八重垣を"
和歌発祥の舞台は雲南市大東町須賀。それはまた、別のお話でご紹介させていただきます。お楽しみに...☆