雲南市のほぼ中央を貫流する斐伊川(ひいかわ)。

最後は出雲市を流れ、宍道湖へと注ぐ斐伊川

全長153km。
その源を中国山地、島根県奥出雲町と鳥取県日南町との境にある船通山(せんつうざん)に発し、奥出雲町、雲南市、出雲市へと流れ、宍道湖に注ぎます。

船通山 斐伊川源流 「鳥上滝」

この斐伊川流域は、
「日本神話」にでてくる
スサノオノミコトによる
ヤマタノオロチ退治のお話の舞台になったと言われていて、この伝説にゆかりの
ある場所がたくさん残っています。

船通山についてはこちらもどうぞ→現地レポート≪春の船通山(奥出雲町)≫
スサノオノミコトについてはこちらもどうぞ→現地レポート≪素鵞社と須佐神社 (出雲市)≫

今回はそのなかから雲南市の伝承地を2か所ご紹介します。

その前に、ヤマタノオロチ退治がどういうお話だったかというと・・・

ヤマタノオロチは、頭と尾が8つもあり、その大きさは8つの谷と8つの山に
またがるほど、また胴は苔むし腹は血がにじんで赤く爛(ただ)れていると伝わる、見るも恐ろしい怪物。このオロチが毎年、斐伊川上流にやってきては、そこに暮らす老父(辺りの国を治める国神(くにつかみ))と老女の娘を一人、食べていってしまうのです。

8人いた娘のうち、残るはついにクシナダヒメただ一人になりました。
今年もそろそろまたあのオロチがやってくる頃・・
親子が泣いているところに登場するのがスサノオノミコトです。
事情を知ると、退治したあかつきにはクシナダヒメを妻にする約束をとりつけ立ち向かいます。
ヤマタノオロチを強い酒で酔わせたところで剣をとると、見事退治!親子を救います!
そうしてスサノオノミコトとクシナダヒメは結婚し、夫婦となったのでした。

簡単に紹介するとこのようなお話です。

それでは、ひとつめの伝承地へ。

≪天が淵≫

天が淵

まずはガイドブックの解説をどうぞ。

「斐伊川の上流、木次町湯村地内にある天が淵は、ヤマタノオロチが棲んでいたところと伝えられています。また別の伝承では、スサノオノミコトに「八塩折の酒」を飲まされて、酔いつぶれたオロチが逃げ込んだ場所ともいわれています。もともと万歳山と天が淵は山続きになっており、オロチを追い出す為にスサノオが鉄を溶かし、木や草と一緒に万歳山から流し込んだことから、天が淵の岩や砂が赤みを帯びているともいわれています。」
(島根県雲南市 ヤマタノオロチ伝説を巡る旅 ガイドブック)

足湯もできる出雲湯村温泉から下流方向へ車で5分足らずのところにあります。

出雲湯村温泉足湯から斐伊川上流を望む
出雲湯村温泉足湯から斐伊川上流を望む

出雲湯村温泉足湯
出雲湯村温泉足湯

出雲湯村温泉足湯から斐伊川下流を望む
出雲湯村温泉足湯から斐伊川下流を望む 

斐伊川のすぐ横を走る国道314号線沿いに案内看板や東屋があり、数台車を停めるスペースもあります。

駐車場からの眺め

駐車場からの眺め

案内看板

案内看板

国道沿いの駐車場からおりて行けます

国道沿いの駐車場からおりて行けます 


東屋からも見下ろして眺めることができますが、川岸までおりていけます。

天が淵へ向かう階段
天が淵へ向かう階段 

この階段、段差が狭く苔がたくさん生えていて、注意深く足元を見続けているうちオロチの上でも歩いているかのような気がしてきました。

階段

そんな気分で川のほとりに降り立つと、もうそこは神話の世界。

川のほとり

水の中に土が盛り上がったところがあり、水面近くにうっすら見える様子が、オロチが横たわっているようにも見えてきました。そういえばこの辺りだけ、水が流れているというより留まっていて、潜んでいるオロチをそっとかくまっているかのよう...
いまにも目をさましザバーッと起き上がってくるのでは...! 

天が淵

天が淵

想像を膨らませているうちにありとあらゆるものがオロチに見えてきてドキドキしました。

天が淵

天が淵

天が淵から斐伊川上流方向を望む
天が淵から斐伊川上流方向を望む

天が淵

天が淵から下流方向を望む
天が淵から下流方向を望む 

天が淵を発ち次の目的地へ。車で国道314号線を走り、雲南市役所があるまちの中心へ向かいます。

斐伊川堤防桜並木と願い橋
斐伊川堤防桜並木と願い橋

「日本さくら名所100選」に認定されている斐伊川堤防桜並木や、国道54号線に沿って流れる三刀屋川との合流点に近い場所に、今回ご紹介するもうひとつの伝承地があります。

≪八本杉≫

八本杉

こちらもガイドブックの解説からどうぞ。

「斐伊神社の飛地境内にある八本杉は、スサノオノミコトがオロチを退治した後、オロチが再び行き返り危害を加えないように、その八つの頭を埋め、その上に八本の杉を植えたと伝えられています。この杉は、長い年月の間、斐伊川の氾濫によって何度も流失しましたが、その度に補植され、現在の杉は明治6年(1873年)の水害の後に植えられたものといわれています。」
(島根県雲南市 ヤマタノオロチ伝説を巡る旅 ガイドブック)
これだけの土地にこんな大きな杉が8本も...
・・・いや、もう、そうでしょう。埋まってるでしょう。
ちょっと杉自体がオロチにみえてくるけど。埋まっていてください!

八本杉

八本杉

スサノオノミコトが初めに降り立った地、現在の奥出雲町ではかつてたたら製鉄が盛んで、斐伊川下流域はその影響を受けてたびたび川が氾濫していたことから、
斐伊川そのものがオロチに例えられたものだとか、ヤマタノオロチ退治のお話についてはさまざまな解釈もされているようですが、実際に伝承地を訪れてこの目で見ると、本当にあったお話だよね・・・と思わずにはいられないほど、どちらもグッとくる、雰囲気に満ちた場所でした。