知夫里(ちぶり)島。思い起こせば数年前、松江市島根町の日本海を見下ろす運動広場。「ほらあそこ、あの赤く見えるところ、あれが赤壁だよ。」と教えられ、(ああ、あれが有名な・・行ってみたい・・)と思いを膨らませていた憧れの島。あの日の"あそこ"がいま、"そこ"目の前に・・・ついに。来た!

島根県隠岐諸島知夫里島。本州からの距離およそ40キロ。隠岐諸島 4つの有人島のなかで本州に一番近くて一番小さい島。その島の西側に、1キロに渡って赤、黄、茶色の鮮やかな色の断崖が続くところを赤壁といい、それを真近にみることができる場所が、知夫里島の代表的な観光スポットになっています。

港から車で向かいます。近代的な、隠岐で唯一のループ橋を渡って役場や小中学校、集落を過ぎ、山肌の道を進むあたりから、目に入るものが少しずつシンプルに、鮮やかに、大きくなっていきます。それにつれて自分の目が見開き、輝いていくのがわかります。自分の内から感情がでるより先に、大地の迫力が身体にぶつかってくるかのような、圧倒される感覚。

 

車窓からの眺め

牛のからだアップと、突然行く手を塞ぐ黒いかたまりが。牛!道路の真ん中に2頭の牛が寝そべっています。放牧された牛がここで休んでいるのです。確かに山の斜面の間で平らになっている道路は休むのにちょうどよさそう。と言って、ここで牛さんに気を遣い過ぎて止まってしまうとだめなのです。ひるまずジリジリ進むと・・・「しょうがないなぁ」 どっこいしょ   すみませんね 失礼しますよ。

二頭の牛牛の顔アップ

やがて駐車場に到着。ここから展望所まで少し歩きます。杖も用意されていて自由に使えます。牛が通らないよう工夫された木のゲートをいくつか通り抜けます。それでも道の上にはところどころにフンが・・ だけど臭わないし不快でもない。いま目の前に広がる壮大な世界のなかでは牛のフンのひとつやふたつ、十や二十、何ということはないのです。よけてまたいで進みます。行きは登り道。ちっぽけな自分は駐車場から展望所までの何てことない距離に、息を、切らし、体力を、消耗しないよう、前を行く人の背中・・と足元に集中。やがて到着。いよいよ赤壁を真近に見るときがきたのです。

赤壁

―――――。 絶句。赤壁を眼前にして受けた感覚を擬態語で表すならブワッです。 ブワッときました。

昨年の2013年秋、隠岐は世界ジオパークに認定されました。パンフレットの説明などによると、隠岐諸島は約600万年前に噴火した2つの大規模な火山により原型がつくられ、その後の火山活動の繰り返しで現在の島のかたちがつくられた、とあります。この赤壁の、赤くみえるところや白っぽくみえるところはどちらも同じ成分、鉄ですが、赤いのは噴火後まだ高温のときにマグマのしぶきが酸化したためで、帯状の白っぽいところがマグマの通り道なのだとか。崖は50メートルから高いところは200メートルもあり、剥き出しの大地は地球のエネルギーそのもの。ただ黙って全身でそのパワーを受け止めます。

赤壁上部と牛・・ふと見やると、牛の家族が崖ぎりぎりのところで草を食んでいます。子牛が落ちないかとハラハラしながら眺めているうち、牛ファミリーののどかさが、迫力をもって切り立つ崖となんとも対照的でふっと脱力、ようやく振り切っていた興奮の針が戻ってきたような。切り立つ崖と草を食む牛赤壁から、いま歩いてきた島側のなだらかな斜面の景色が幻想的で、ファンタジーの世界にいるような気がしました。何時間でも佇んでいたかったです。駐車場までの帰り道は来るとき近くでみてきた神島がきれいに望めます。7月半ば、オレンジ色のかわいいコオニユリの花も咲いていました。

ジオパーク。"「大地の公園」「地球の公園」、地球を丸ごと考える場所"。赤壁は力強く、大地はかっこよかった~。

 

「赤壁上部から続く丘」の拡大写真

「広い丘と牛」の拡大写真

「展望所から島側の眺め」の拡大写真